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薬草園歳時記(4)5月31日の誕生花  イヌハッカ、カラー、ルピナス、藤 2021年6月


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イヌハッカの花(薬草園提供)

キャッツミント(ニューヨークの福のり子さんより)

 5月31日、私の誕生日である。同じ誕生日の友人が何人かいる。その中の1人であるニューヨーク在住の福のり子さんから、誕生祝いのメッセージに花の写真が添付されていた。その説明に、「写真はキャッツミントという5月31日の誕生花です」とあったので調べてみた。
確かにそういう説明のサイトがあり、「キャットミント」と日本式の発音になっており、花言葉は「自由な愛」とあった。晩春から秋に、短く細かい毛が生えて白色を帯びた緑色の葉がついた茎先に、紫色の斑点のある青紫色のかわいい唇形花が穂状に次々と咲くとあった。
花の名は、同じイヌハッカ属の白い花が咲くキャットニップに、猫が喜ぶ香りがあることから名づけられた。

 イヌハッカは、シソ科イヌハッカ属(Nepeta)の多年草で、ハーブの1種である。日本に帰化したものが長野県筑摩郡で発見されたことから、チクマハッカとも呼ばれる。高さ50~100cm、茎は直立して、鋸歯のある葉は対生する。茎と葉の全体に白く細かい綿毛があり、若葉には芳香がある。古くから薬草として利用された品種であり、肉料理の香り付けに用いたり、サラダに入れたり、ハーブティーに利用したりする。夏に白か紫色の6mmほどの花を咲かせる。
同じ属のネペタ?ムッシーニから生じた雑種などは花壇やガーデニングでよく植えられ、キャッ?ミントと呼ばれている。
 植物名で、有用な植物に似ているが違うものを「否ぬ」と言い、〝役に立たないもの“という意味で「イヌ」とつけることが多い。ハッカに対するイヌハッカである。ハッカ属(Mentha)に比べると、香りが弱く、精油が採れないことから、役に立たないという名が付いた。
 種名のカタリア (cataria ) は、ラテン語で、猫に関する意味があり、また英名のCatnipには「猫が噛む草」という意味がある。名の通り、イヌハッカの精油には猫を興奮させる物質が含まれ、猫がからだをなすりつける。イヌハッカは「西洋マタタビ」と呼ばれることがある。他にも猫に同じ効果をもたらすと言われている荊芥(ケイガイ)は、実際は効果があるかわからない。荊芥の花穂は漢方薬として鎮痛、解熱の目的で使われている。
 木天蓼(マタタビ)の生薬名はモクテンリョウ、果実に虫瘤ができたもので、冷え性、鎮痛剤として用いられる。疲れた旅人が実を食べて再び旅を続けることから「又旅」と呼ばれた。荊芥は薬草園にあるが、木天蓼はない。

木天蓼の葉の白みゆく梅雨の月  片山由美子

 5月31日の誕生花には他に「カラー」「ルピナス」「藤」がある。「カラー」の花言葉には〝華麗なる美“、〝乙女のしとやかさ”、〝清浄”があり、「ルピナス」の花言葉には〝想像力”、〝いつも幸せ”があり、「藤」の花言葉には〝歓迎”、〝確固たる”がある。
 「カラー」はサトイモ科オランダカイウ属で、別名で海芋(カイウ)と呼ばれる。原産地は南アフリカでエチオピアの国花である。花の色に、白?ピンク?黄?紫?赤?オレンジなどがある。 外側の包んでいるようなのは花びらではなく、仏炎苞(ブツエンホウ)で、花は中にある黄色い芯のようなものである。肉穂花序(ニクスイカジョ)と呼ばれる。仏炎苞はサトイモ科に見られ、仏を包んでいるように花を包む。山葵の根茎のような地上茎を持つが有毒植物である。水芭蕉が育つような水湿地を基本的に好むが、そうでない種類もある。
 「ルピナス」はマメ科ルピナス属で、別名、昇り藤や立ち藤、葉団扇豆(ハウチワマメ)、羽団扇豆がある。南北アメリカや地中海沿岸を原産地とする。ルピナスは藤の花に似ているが、藤がたれさがるのに対して、ルピナスは上へのびる。
 「藤」はマメ科フジ属に分類され、原産地が日本で、英名はJapanese wisteriaである。蔓性の植物で好日性であり、花の季節には藤棚から花が垂れ下がる。藤には和の風情がある。昔から日本を代表する花として外国人に人気がある。和服の髪飾り、着物の模様にもよく使われる。
 一般的に観賞用に植えられている藤は、花序20cmから90cm近くに達し、絡んだ蔓は、上から見て時計まわりに巻きついている。日本各地の産地に自生する山藤は、花序は10cmから20cm程度で、蔓は上から見て反時計まわりに巻きつく。花期はほぼ同じで、どちらも花が美しい。

熊野の長藤(撮影:筆者)

 2021年4月26日、静岡県立農林環境専門職大学の鈴木滋彦学長にお目にかかった後、丹羽康夫先生のご案内で、磐田市熊野の国の天然記念物、樹齢800年の長藤を見に行った。ちょうど満開で子どもたちも藤の花の垂れ下がる様子を見ていた。

子どもらの目線さまざま藤の花  和夫

 このエッセイについて、薬学部附属薬草園の専門員、山本羊一さんに多くの貴重なご意見をいただいた。記して謝意を表する。


尾池 和夫


薬学部の薬草園サイトはこちらからご覧ください。
https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~yakusou/Botany_home.htm

キャンパスの植物は、食品栄養科学部の下記のサイトでもお楽しみいただけます。
https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/four_seasons/

下記は、大学外のサイトです。
静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも薬草園を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/742410.html?lbl=849

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